とてもしょうがないものの集積地

つまらん世界(つまらんのは自分)

TON インフルエンザウイルス説

世間一般では多くの野獣先輩新説がたてられる中、本説では彼の身近な人物、遠野について、彼がインフルエンザウイルスなのではないかという説について検証していく。

 

早速ではあるが、いくつか根拠を挙げていきたい。

 

根拠① 屋上での日光

ウイルスは高温多湿下では増殖しにくい。野獣先輩は感染予防のために屋上で焼いている。

しかし、「四章は純愛!そんなはずがない!」という反論があるだろう。これについては後ほど、改めて検討することとして次の根拠へと移る。

 

根拠② アイスティーへの投薬

そもそもウイルスに睡眠薬……?と思う方々も多いかもしれない。しかし、そもそもそれは思い込みである。

野獣先輩がここでサーッ!と迫真の形相で注ぎこんだものは睡眠薬でなく、後ほど再び出てくるが、インフルエンザといえばあの薬、そうタミフルである。

だが、一体ウイルスがどうやってそれを飲めるのだろうか?ここで一度思い返してみて欲しい。野獣先輩がちょこざい細工を施している場面に遠野は映されていただろうか。

つまり、屋上とキッチンとは、野獣邸という空間の中に並置されているのではなく、内と外の関係、要するに心象と現実という関係にあり、互いに直接干渉はしていないのである。

これまでのことを踏まえると、野獣先輩は実在のキッチンにおいて、わざわざアイスティーに粉薬を溶かすという手間のかかる上に苦みをふんだんに味わえるデメリットしかない方法で薬を飲んでいるさまを(この様子は写されてはいないが)、インフルエンザウイルス=遠野へタミフルが溶かされたグラスを渡す比喩によって表現していると言える。

 

根拠③「タミフルさん!?ちょっと、まずいですよ!」

これについて詳しい説明は不要だろう。これに続いて野獣先輩が「暴れるな……暴れるなよ……」と言っているのも決定的である。

 

根拠④ 世界レベル

遠野は世界レベルである。

インフルエンザも世界的に流行している。

 

さて、以上4つの根拠を挙げたが反論は多々あるだろう。とりわけ「四章が純愛である」という通説によるもの、また遠野がウイルスであることが分かっていながらなぜわざわざ野獣先輩は彼を家に招き入れたのかは未だ不明瞭である。

前者については、そもそも四章は純愛であったのか?という疑問がある。

この通説を覆すためにも、まずは後者の反論に対して、なぜ野獣先輩が遠野を招き入れ、また大胆な告白さえをもしたのか説明していくこととする。

 

根拠⑤ われわれのウイルスに対する態度について

パンデミック下にある昨今、われわれの日常は大きく変容し、感染症の恐ろしさを改めて思い知らされることとなっているが、それはあくまで未知のウイルスに対しての話であって、人類の文明の進歩によって対処可能となったものについては必ずしもそうであるとは言えない。そしてそれが顕著なものの一つがインフルエンザウイルスであろう。

本題に戻るが、野獣先輩と遠野が共に存在しているのは心象の方であることはすでに示している。つまり、ここでの遠野に対する先輩の態度は、現実における彼の病原体に対する態度であるということになる。

われわれはウイルスを歓迎するのか、と思われるだろう。しかし、われわれは学校や職場など、たとえ流行り病にかかってでも行きたくないと思ったことはないだろうか。

野獣先輩の遠野に対するあの寛容な態度は、そうした拒否感を表したものなのである。これは「練習きつかったねー」と溢していることからも明らかである。

 

とはいえ本心は罹患したかったわけではない。あくまで招き入れる態度があっただけであり、疲弊した野獣先輩の隙につけこんで遠野が侵入してきただけなのである。

それゆえ、根拠①の矛盾点についても説明がつく。

われわれはなんらかに罹りたいと思う反面、それの初症状が出始めるや否や(もはや無駄であるのに)感染予防を始めたりはしないだろうか。

遠野を家に招き入れるやいなや、現実世界の野獣の体調には異変が生じ、部屋の温度を高めようと暖房器具を使い、湿度を上げるよう努めた。それがあの心象世界での日光浴なのである。

 

それから薬を飲み、眠りにつくこととなる。

心象世界における昏睡レイプはウイルスへの抵抗の表れであるといえる。

しかし、ではなぜ「お前のことが好きだったんだよ!」などと彼はのたまったのだろうか。

これについても、われわれのウイルスへの態度から説明が可能である。

先ほど述べたように野獣先輩は現実への逃避ゆえに感染症へと罹ることを望んでいた。しかし、いざそれの症状が出ると苦しく、抵抗せざるを得なくなった。

そのため、薬を飲み、安静にしていた。それが功を奏し体調は回復していった。

「お前のことが好きだったんだよ!」は、ウイルスの猛攻が収まり体調が平穏を取り戻しつつある中、不意にわれわれの頭をよぎる苦しい日常への帰還を惜しんで発せられた告白なのである。この告白は通常、秘めてきた思いを明らかにしたものだと解されているが、実際はそうではなく、望みながらも自ら葬り去った、その別れを惜しんで発せられた、いわば惜別の言葉なのである。

出席停止期間が定められているように、体調が回復したとはいえウイルスはまだ体内に残留している。幸せなキスは、遠野との別れを表しているのである。

 

以上、5つの根拠から、遠野はインフルエンザウイルスであり、4章は純愛ではなく打算愛の物語で、野獣先輩の心象世界の物語である。

 

(ガバガバ)アナルグラムもやらなければならない。

だが飽きたのでこれにてQ. E. D. (証明完了)